止まった腕時計

長年使っていた腕時計(ほかのものを使った時期もある)が止まった。数ヵ月前に電池を交換し、しばらく動いていたのに、ある朝止まっていた。

人もこんなふうにして死んでいくのだろうな。時計が止まっているのを見た瞬間、そう思った。

しばらくして、止まった時計を時計屋に持っていったら、電圧があるのに動いていないから、修理が必要だと言われた。

30年ほど前のモデルだそうで、修理代が2万円かかるという。新しい時計を買える金額だ。どうしたものか、考えが定まらなかった。

そして、結局、時計を持つのをやめることにした。たしか、丸谷才一の小説だったと思うが、腕時計は奴隷の象徴だと書いてあった。

もう、己は時間の奴隷から解放されてもいい時期だろう。腕時計を持たずとも、スマホを持つことで十分に奴隷化しているからだ。

その奴隷身分は情報の奴隷で、時間の奴隷よりも低い身分だ。そのことを、己はよく知っている。

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